2025年3月おたいら音楽集|春の予感に揺れる6曲(後編)

毎月心に残ったおすすめ曲をジャンル問わず紹介する「おたいら音楽集」のアイキャッチ画像です 音楽

春の訪れを感じる3月。
寒さが和らぎ、街の色彩が少しずつ鮮やかさを取り戻すこの季節は、心の奥に眠っていた感情がふと顔を出す瞬間でもあります。そんな揺れる気持ちに寄り添ってくれる音楽を、今月も「おたいら音楽集」としてお届けします。

今回の後編では、邦楽ロック・インディーズの中でも、感情の深さと音の力強さが際立つ6曲を厳選しました。
前編では春の始まりにふさわしい軽やかな楽曲を中心に紹介しましたが、後編では葛藤・希望・青春・孤独といった、より内面的なテーマに焦点を当てています。

選曲は以下の6曲です。

  • 「偽物勇者」 / 703号室
  • 「かくれんぼ」 / AliA
  • 「エメラルド」 / back number
  • 「大不正解」 / back number
  • 「ドラマツルギー」 / Eve
  • 「拝啓、少年よ」 / Hump Back

それぞれの楽曲が持つ物語性、サウンドの個性、そしてリスナーの心に響く感情の揺らぎを、丁寧に紐解いていきます。
SNSでの反響やライブでの描写も交えながら、音楽が持つ力を改めて感じていただける内容になっています。

春は、別れと出会いが交差する季節。
そんな時期にこそ聴きたい、心に残る6曲をぜひご堪能ください。

偽物勇者 / 703号室

703号室は、2019年に活動を開始した東京発のロックバンド。
ボーカル・たくみを中心に、日常の葛藤や感情をリアルに描く歌詞と、エモーショナルなサウンドで注目を集めています。特に「偽物勇者」は、彼らの代表曲として多くのリスナーの心を掴んできました。

この曲を初めて聴いたとき、胸の奥がじんわりと熱くなるような感覚がありました。
“偽物”という言葉が、まるで自分のことを言われているようで、誰かの期待に応えられない自分、でもそれでも誰かのために立ち上がりたいという気持ちが重なりました。

疾走感のあるギターと、たくみの切実な歌声が絡み合い、感情の波がそのまま音になって押し寄せてくるような印象。特にサビに向かって加速する展開は、心の中の葛藤が爆発する瞬間のようで、何度聴いても鳥肌が立ちます。

この曲は、たくみ自身が「自分の弱さを肯定するために書いた」と語っており、聴く側にもその思いがしっかり届いていると感じます。
聴き終えたあと、静かに深呼吸したくなるような余韻が残る、心に寄り添う一曲です。


かくれんぼ / AliA

AliAは、2018年に結成された6人組のロックバンド。
ヴァイオリンを取り入れた独自のサウンドと、ボーカル・AYAMEの透明感ある歌声が特徴で、ジャンルの枠を超えた音楽性で注目を集めています。

「かくれんぼ」は、2020年にリリースされた楽曲で、切ない恋心と孤独感を繊細に描いた作品です。
ヴァイオリンの旋律が印象的で、誰にも言えない気持ちをそっと包み込んでくれるような優しさがあります。

イントロから漂う哀愁、そしてサビに向かって広がる音の厚みは、感情が波のように押し寄せてくるよう。
「見つけてほしかった」「気づいてほしかった」という思いが、音の隅々から伝わってくるようで、誰かに気づいてもらえない孤独感や、届かない想いが胸に響きます。

この曲は、メンバーが「自分の中にある“言えない気持ち”を音にした」と語っており、聴くたびに自分の過去の恋愛や、言えなかった気持ちがふと蘇ってきます。
夜、ひとりで聴くと、心の奥にしまっていた感情と静かに向き合えるような気がします。

この「かくれんぼ」の映像はいろいろなバージョンが掲載されていますが、私は日比谷公会堂のライブバージョンを紹介します。バンドとストリングス、ボーカル、そして観客の熱い空気が一番感じられる映像だと思います。


エメラルド / back number

back numberは、2004年に群馬で結成された3人組ロックバンド。
繊細な恋愛描写と、誰もが共感できる感情を歌い上げるスタイルで、幅広い世代から支持を集めています。

「エメラルド」は、2020年にドラマ『危険なビーナス』の主題歌として書き下ろされた楽曲。
ミステリアスでありながら、どこか切ない雰囲気を持つこの曲は、back numberらしい繊細なメロディと深い感情表現が光ります。

イントロの静けさと、そこから広がる幻想的なサウンドが、まるで春の夜に一人で歩いているような感覚を呼び起こします。
「君のことをもっと知りたい、でも知ってしまったら壊れてしまうかもしれない」という恋愛の不安と期待が交錯する瞬間が描かれているように感じます。

この曲は、清水依与吏が「人の心の奥にある“触れてはいけない部分”を描いた」と語っており、聴いていると自分の中にある繊細な感情に気づかされることがあります。
特に夜の静かな時間に聴くと、心の奥にある“まだ言葉になっていない気持ち”と向き合えるような気がします。


大不正解 / back number

「大不正解」は、2018年に公開された映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』の主題歌として書き下ろされた楽曲。
back numberの中でも異色のロックチューンで、普段の繊細なラブソングとは違い、力強くて攻撃的なサウンドが印象的です。

イントロから炸裂するギターとドラムの重厚なサウンドは、自分の信じた道を突き進む覚悟がそのまま音になっているようで、聴いていると自然と背筋が伸びるような気持ちになります。

この曲は、清水依与吏が「正解を求めすぎる世の中へのアンチテーゼ」として書いたと語っており、迷っている自分に「それでも進め」と言ってくれているような気がして、失敗してもいい、間違ってもいいという勇気をもらえます。

ライブ映像で観たとき、照明が赤く染まり、観客が一斉にジャンプする瞬間が圧巻でした。
感情を爆発させる場面で必ず演奏される定番曲であり、春という新しい挑戦の季節にぴったりの一曲です。


ドラマツルギー / Eve

Eveは、YouTubeやニコニコ動画を中心に活動を広げてきたシンガーソングライターで、独特の世界観と映像美で若者を中心に絶大な人気を誇ります。
「ドラマツルギー」は、2017年にリリースされた代表曲で、哲学的な歌詞と緻密なサウンド構成が特徴です。

イントロの電子音とビートが生み出す緊張感、そしてサビで一気に広がるメロディは、物語のクライマックスを迎えるようなドラマ性を感じさせます。
Eveの独特な歌声が、楽曲の世界観をさらに深めていて、聴くたびに新しい解釈が生まれる不思議な魅力があります。

この曲を聴くと、自分とは何か、生きるとは何かといった問いが自然と浮かび上がってきて、春という節目に、自分自身と向き合うきっかけをくれるように思います。

特にイヤホンやヘッドフォンでじっくり聴くと、音の細部にまでこだわりが感じられ、まるで一つの短編映画を観ているような没入感があります。もちろんステレオで。左右から味のある歌詞とメロディーが耳から体全体に包み込んでいきます。
Eveの音楽は、聴く人の内面に静かに語りかけてくる力を持っていると感じます。

下記で紹介しているyoutubeの再生回数は何と2億回。ここまで再生される理由は、一度聴いてもらえたら理解していただけると思います。いつまでも耳の残るメロディーと余韻の残る歌詞。一度は聴く価値のある一曲だと思います。


拝啓、少年よ / Hump Back

Hump Backは、大阪発の3人組ガールズロックバンド。
ボーカル・林萌々子のまっすぐな歌声と、青春の葛藤をストレートに描く歌詞で、10代〜20代を中心に熱い支持を集めています。

「拝啓、少年よ」は、2018年にリリースされた楽曲で、夢を追いかける少年の姿を力強く描いた青春賛歌。
疾走感のあるギターと、林の熱量のあるボーカルが印象的で、聴いているだけで前向きな気持ちになれる一曲です。

この曲は、林が「夢を諦めかけていた自分に向けて書いた」と語っており、聴くと自分の10代を思い出して、今でも夢を諦めたくないと思えるようになります。

Hump Backのライブは、青春の熱量をそのまま体感できる場であり、この曲はその中心にある存在です。

🌸 まとめ

春は、別れと出会いが交差する季節。
心が揺れる瞬間が多くなるこの時期に、音楽はそっと寄り添い、言葉にできない感情を代弁してくれる存在です。

今回紹介した6曲は、それぞれが異なる視点から「揺れる心」を描いています。
703号室の「偽物勇者」は、弱さを抱えながらも誰かのために立ち上がる勇気を。AliAの「かくれんぼ」は、届かない想いと孤独の切なさを。back numberの「エメラルド」と「大不正解」は、恋愛の不安と人生の選択に向き合う姿を。Eveの「ドラマツルギー」は、自己探求の深さを。Hump Backの「拝啓、少年よ」は、夢を追い続ける力強さを——それぞれの楽曲が、春という季節にぴったりの感情を映し出してくれます。

音楽は、聴く人の人生の一部になり、記憶と結びついていきます。
この6曲が、あなたの春の記憶にそっと寄り添い、何かを始めるきっかけになれば嬉しいです。


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